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ヲタママ女医がいろいろ語ってみるか

普段はいたって普通のお医者さん、中身はオタク、一応ママ。少々腐ってます。

手術をするということ

ワーキングマザー

 たまには、仕事関係の思ったこと書きます。いつもの腐ブログはお休み。

 

 先日、手術の助手に入っていて、想定外の事態が起きました。安全に、安全にと進めていた手術でも、人は生き物、医者も生き物、思わぬ事態というものに出くわすことは多々あります。それが、少しの修正でカバーできるもの、多大な修正を必要とするもの、手術をやめる、または方針を変えないといけないもの、事態の深刻さはさまざまなれど、術者、助手の力の見せ所は、そういったときにどう対処するかってことです。

 とにかく一番大事なことは「患者さんの命」。これをおいて他にはありません。無理して進めると、命にかかわるかもしれない・・・そんな時は、最後まで手術が終わってなくても命が優先。一旦傷を閉じて、生命を優先します。

 この日は、3人で手術を進めていました。事態が起こり、大事なのはまず、周りが冷静になること。術者はどうしても自分がやったことに動揺しやすいのです。

 

 手術助手の仕事は、執刀医が手術を進めやすいように術野の展開をしたり、見やすいように出血をとめたりするだけでなく、手術がちゃんと順序どおりこなせてるかのダブルチェック、想定外の事態になった時のアドバイサー的な役割もあります。

 手術が上手くいくかどうかには、執刀医だけでなく助手の存在も大事。助手が自分と同等か、それ以上の技量、経験値があると非常に手術はやりやすく、早く終わります(『コウノドリ』でいうと、鴻鳥先生と四宮先生とか。。。緊急事態が起こると、どっちかがどっちかを呼びますよね)。どんなに自分より年上の先生でも、人間だから時に忘れることもある。助手している方が手術を冷静に見れて、上の先生と手術してる時でも、私は、こうした方がいいのではとか、あ、これやり忘れてるなって気が付いたときは、思ったこと割に口に出して言うようにしています。

 

 緊急事態が起こったら、まずは人を呼んで、なるべく多くの人の意見を聞いて相談することから。麻酔科含めみんなで相談して、最善の方法を考える。その日も、残ってた先生方が駆けつけてくれ、事なきを得ました。執刀医&主治医は、手術から手を下して家族へ事態を説明、残った二人で残りの手術を終わらせて、患者さんの術後を観察、他の先生は、万が一のことを考え、より高度な病院へ連絡。関連の大学病院の経験豊富な先生にも電話で事態を相談と、ほんとにマンパワー大事です。そして、それを各自察知して、誰に指図されなくてもあっという間に動いていたから、自分の働いてる病院の先輩医師達の海千山千を超えた経験値にさすがだなって思ってました。一緒に働けて頼もしい、信頼できる先生方です。

 

 ただ、目が覚めて何も知らない患者さんは、終わったはずの手術が終わってないんですね。改めて、準備を整えて、後日にやりますって言われても、なかなか受け入れがたいものがあるのもわかります。患者さんの心情に立てば、「なんで一度にやってくれなかったんだよ」って。もう一回手術なんて嫌だよって。

 

 でも、それは何事も起こらず生きているから言えるセリフ。どんなに後で責められることがわかっていても、患者さんに大事がないことが一番。石橋の上をたたきすぎるほど叩いて、かちかちに固まっていること確かめて、とにかく落っこちないように準備すること。安全な手術をするうえでとても大事だと思ってます。

 

 血液サラサラの薬を飲んでいる人、糖尿病のコントロールができてない人、太りすぎの人、自覚症状がなく元気だから「なんで早く手術してくれないの!」と言われます。

 そう言われても、万一出血が止まらない事態になったら?感染したら?(血糖値のコントロールが悪いと感染しやすい)、静脈血栓が起きたら?(肺血管に詰まると死亡する、太った人はリスク高い)。最悪の事態になることを常に考え(しかも、長く医者していると痛い経験あり)、そのリスクを減らしたいから医師は慎重になります。自覚症状なくても、血液サラサラの薬を止めて、その代わりに点滴で管理するための手術1週間前からの入院(サラサラの薬を止めてる間に血液が固まってつまらないように)、糖尿病をコントロールするための手術1週間前からの入院。なんで、そんなに前に入院しなくちゃいけないの?退屈~って言われても、みんなあなたの為です。何かが起こってからは遅いんで。

 

 無事に手術が終わって、ほっとするのは患者さんも、治療する医療者も同じ。

 

 いつも手術場で石橋の上を渡り続けてるよな~。いつか崩れるんじゃないかハラハラしながら、それでもできるだけ固い石橋を地道に作って、たたいて壊れないことを確認して進んでいくしかないんだよなあ。。。って。


 たまにはこんな真面目なことも考えたりしてます、、、、需要あるのかな、この記事って、と思いつつ。